プロジェクトマネジメント学習教材発売中!!


テレビドラマで斬るプロジェクトマネジメント 第35回

  • 閲覧:1,158
  • 印刷:10
  • 評価:4.67 σ = 0.58
  • 公開日:2009/01/21
  • 更新日:2009/01/21

はてなブックマーク 印刷用を表示

 法医学をテーマにしたドラマ「VOICE」。法医学という医学のなかで唯一「死者」を扱う分野をテーマに取り上げたドラマである。
 ドラマでは死者たちから残されたメッセージを読み解いていくが、プロジェクトにおける「VOICE」は果たしてプロジェクトに活かされているのだろうか。


亡くなったプロジェクトのヴォイス(VOICE)に耳を傾けるimg30  

■ 亡くなった人の声に耳を傾ける医学

「亡くなった人の声を聴く」というと、恐山のイタコを連想してしまうが、そうではない。病人を出さないようにしたり、病人を治療する通常の医学とは異なり、死者の失われたメッセージをきくのが、法医学である。法医学とは「医学的解明、助言を必要とする法律上の案件・事項について科学的で公正な医学的判断を下す」と定義され、実務では、異状死体の検案・解剖を行っている。死体は犯罪死体が中心であるが、病気によって突然死した場合の死因究明なども行なうことがある。

法医学は、やはり医学という分野のなかでは異色のものであろう。まず、相手が死者である。「命を救おう」という救命救急などに比べると、迫力や緊急度において、劣るように見える。ドラマでも、主人公である加地大己(瑛太)は、心臓外科を志望していたが、教授の佐川(時任三郎)によって法医学のゼミに移動させられたのだった。
佐川の部屋へ向い、「どうしてそういうことをしたか」と理由を尋ねる加地に、佐川は法医学の重要性について語る。

佐川「亡くなった人の声に耳を傾ける、そういう医学があってもいいとは思わないか」
加地「でも、どうしてオレを」
佐川「普通の学生は結果にしか興味がない。でも、お前は違う。結果よりもまず理由。どうして、なんで、どうして、なんでってな。いそうでいないんだよな、そういうやつって」

医学に、亡くなった人の声に耳を傾ける医学-法医学-が存在しているが、プロジェクトにも亡くなったプロジェクト-失敗したプロジェクト-を解剖し、分析することがある。いや、実際には失敗プロジェクトを発生させないために、PMBOK をベースとするモダンプロジェクトマネジメントが普及したのである。失敗プロジェクトこそが、現代のプロジェクトマネジメントを産み出した母といっても過言ではない。

■ プロジェクトにおける法医学

プロジェクトにおいて、この法医学にあたる行為はいくつかある。まず、プロジェクト終了後に行なう予実分析、そしてプロジェクト関係者が集まって行なわれる振り返りや反省会、そして検死レポートに当たる「Lessons Learned (教訓)」などが代表的なものであろう。

予実分析は、プロジェクトの計画時に立てたスケジュール・コスト・スコープ・品質などと、実際のスケジュール・コスト・スコープ・品質などに差異があるかを分析する。もし差異があった場合には、その原因を深堀りしていく。

予実分析が計画と実績を定量的に分析したものであるならば、振り返りや反省会は定性的な分析といえるかもしれない。プロジェクト関係者を集め、プロジェクトにおける問題点だけでなく、成果なども挙げていく。

そして、最後は報告書である。ここ数年ぐらいになって、やっとこのプロジェクト報告書の価値が認識され、作成されるようになってきた。そして、この報告書が Lessons Learned (教訓)となり、次のプロジェクトへ活かされることになる。

<サニー・ベーカーによる大規模プロジェクトの最終報告書>

・プロジェクトの要約(当初計画からの変更点を含む)
・主な達成事項
・当初のプロジェクト目標と達成度の比較分析
・最終の会計報告と予算との差異の説明
・マネジメントや管理業務のパフォーマンスについての評価
・チームのパフォーマンス(特定個人に関する部分は機密扱い)
・さらに調査すべき作業や課題
・類似プロジェクトに対する推奨事項
・際立った貢献をしたチーム・メンバーの認知

(「世界一わかりやすいプロジェクト・マネジメント」第 28 章から)

■ 亡くなったプロジェクトの声に耳を傾け、これからのプロジェクトを成功に導く

プロジェクトの終了時、予実分析を行い、関係者を集めての振り返りを実施し、正式なプロジェクト報告書を作成し、提出した。しかし、現実にこれらの成果物(報告書など)が現場で活用されることは非常に少ない。

例えば、セミナーなどを開催した後のアンケートを考えてみる。セミナーを聴講したひとたちのアンケートはどこまで次のセミナーに活かされているのだろうか?毎回同じようなミスが発生し、不満が溜まっていたりしないだろうか?

プロジェクトも同じである。せっかく作ったプロジェクト報告書は、書類棚で埃をかぶり、現場では、実績データよりも経験値やプロマネの勘がまだまだまかり通っている。同じようなトラブルが頻繁に発生し、そのたびに同じような再発防止策を立案することになる。

法医学の重要性も鑑み、プロジェクトの現場でも「プロジェクト報告書」の発する声を聞き、次のプロジェクトを救うことが重要とされる時代になってきている。
 

ヴォイス~命なき者の声~
2009 年 01 月 12 日~、フジテレビ系列月9で放送。
主演:瑛太。生田斗真、石原さとみ、時任三郎、矢田亜希子らが出演。大学の法医学ゼミを舞台にした青春群像劇。しかし、1話完結の形式を取っており、個々を独立したミステリーとして楽しむことも可能(「ガリレオ」と同じ形式)。初回視聴率は、17.7%。

1/1
INDEX
テレビドラマで斬るプロジェクトマネジメント 第35回
Page 1

プロフィール

司馬 紅太郎, PMP

文系大学卒業後、IT業界に飛び込む。様々なプロジェクトでシステム開発を経験後、今は、大手SIerでPM業務を行っている。PMPであり、ITコーディネータ。著作に、『拝見!プロジェクトマネージャの仕事場-ITプロジェクトの成否の鍵を握る人々-』(技術評論社:共著)『空想プロジェクトマネジメント読本』(技術評論社:監修)など多数。『PMP試験実戦問題』(オーム社:共著)はカブトムシ本と呼ばれ、廃版した後もオークションで売れ続けた隠れたベストセラーである。2009年1月に、最新刊『ニッポンエンジニア転職図鑑』(幻冬舎)を刊行。
E-Mail:shiba-kou@mbj.nifty.com


評価

コメント

(最新日付順)
振り返りの大事さ
非常に興味深く拝見しました。
私はプロジェクトマネージャーでありながら実際の実務は既設装置のメンテナンス業務ばかりで、SV派遣、消耗部品発注と翔泳社発行のPMP教科書に記載されている"プロジェクト"業務ではなく、"定常業務"をこなしております。
最近イヤ気がさす毎日ですが、今回のテレビドラマで斬るプロジェクトマネジメント 第35回を拝見し、勇気付けられた思いがしました。
名前(ゲストの方もコメントをどうぞ):*
メールアドレス(名前にリンク):
URL(名前にリンク):
タイトル:
内容(テキストのみ1200文字まで):*
アイコン:
なし

投稿規定に同意して

トラックバック

この記事のトラックバックURL:

バックナンバー