
■ 本質から迫る「逆ダンドリ術」
昨年末から、世界的に厳しい経済状況が私たちを取り巻いています。企業でも一層のコストカットが行われているようです。私たちも生活を防衛するためには効率化が必要です。そんな訳で今回は、ムダの少ない、より効率的なダンドリを行うためのアプローチ「逆ダンドリ術」についてご紹介します。
■ 空気を描く
製品設計で主流となった3次元 CAD システム。
実物を作らなくてもコンピュータ上で立体を設計することができる便利なツールです。長さや体積はもちろん、材料の密度を入力すれば質量だってわかります。
例えば、車のエンジン本体にシリンダーヘッドという鋳物の部品があります。そのシリンダーヘッドの中は、燃料を燃焼させるための空気が出入りする通路があります。まだ経験の浅い設計者は、自分が見たことのあるシリンダーヘッドのイメージから、その部品の外形寸法を決めていき、形状を作り上げていきます。
しかし、ベテランの設計者は、アプローチが逆です。そのエンジンの性能を出すために必要な空気の流入量を計算し、その空気が通れるだけの通路を設計します。最初に描くものは空気なのです。空気の設計が終わると、それを囲む鋳物で強度を保てるような厚みでくるんでいくとシリンダーヘッドの出来上がりとなります。
シリンダーヘッドにとって、本質は、空気であり、周りを囲む鋳物ではないのです。
■ ライフ&ワークバランス
私たちは、目の前に見えているものに、関心を奪われがちです。本質は、目に見えているものとは限りません。では、日々の時間の使い方はどうでしょう?自分の手帳を見て見ましょう。学校や仕事、飲み会の予定がスケジュールを埋めていませんか?
「逆ダンドリ術」では、まずリラックスする時間の予定を作ります。食事の時間、散歩の時間、読書の時間、入浴の時間、たっぷりの睡眠の時間。その間に、仕事やイベントを入れていきます。間の時間にできるように仕事の期限を決め、効率的にこなしていきます。
睡眠時間を削って働いていては、品質の高いクリエイティブな仕事を数こなすことはできません。脳の情報の再整理を行う睡眠時間は、次の仕事のためのとても重要な時間なのです。
私は、時間の管理のしかたに限らず、人生において大切な時間をどう過ごすかを考えることを、ライフ&ワークバランスと呼んでいます。ワークが前にあるワークライフバランスではなく、あくまでライフが前にあり、それとワークのバランスをとることが重要だと考えています。
■ リラックスする時間からの逆ダンドリ
睡眠時間以外にもリラックスタイムはあります。例えば私がリラックスする時に使う空間は、お寺や神社や公園です。打合せ場所に少し早く移動し、近所にあるお寺に寄ってベンチに座ってみる。5分だけでも気分はグッとリラックスします。
仕事の現場では、私たちは情報に囲まれています。メール、資料、携帯電話、会議、どれも情報だらけです。質の良いアウトプットを出すためには、それらの情報を関連付けたり、整理してアイデアをプラスする作業が必要なのです。リラックスタイムは、そうした脳の情報整理に効果的だと言われています。
幸い、日本には多くの公園やお寺や神社があります。どこも比較的静かで目に飛び込む情報量は少ない環境にあります。そうした場所に行って5分間の時間を過ごすことで、仕事の本質である「優れたアウトプット」を引き出す。仕事のスケジュールの前に、脳のリラックスタイムから、一日のスケジュールを「逆ダンドリ」してみましょう。
■ 目に見えているものは手段
もう、「逆ダンドリ術」がわかってきたかと思います。プログラムを組むときは、テストデータから設計する。プロジェクトの計画を立てるときは、レビューの内容から決めていく。目に見えているものは、手段であって、私たちが得たいもの「そのもの」でないことが多いのです。
本当に得たいものは何か?これについては、いつも考えておく必要があります。私たちは経験を積めば積むほど手順が身についてしまい、手順優先になりがちです。何のためにそれを行っているのかを見失ったままで時間を過ごすのは、人生の時間の無駄遣いになります。
■ 自分の時間をほったらかさない
私たちが働いているのは、生活のためもありますが、仕事で働きがいを得たいという面もあります。今の仕事をやっていて、もし全く働きがいがなく、ただ時間を過ごしているのであれば、もったいないことです。一番良いのは、今の仕事の中から自分の興味あるテーマを見つけて、積極的に取り組んでいくこと。現場の改善をしたり、周りの人の意見を聴いたりすることで、会社にとっても自分にとってもプラスに作用します。
もし、今の職場で働きがいが見つからないという場合には、今の仕事を続けながらも、本当に自分がやってみたい仕事を探すということも大切です。重要なのは、仕事で時間を過ごすことでお金をもらうことでなく、自分の大切な時間をほったらかしにせず使い切るということです。働きがいを生み出すための時間を計画し、残りを他のスケジュールに使うというダンドリです。
■ 実はオーソドックスな「逆ダンドリ術」
ここまで見てきましたように、「逆ダンドリ術」は、実は本質的なモノやコトからダンドリをする、オーソドックスな方法です。しかし、私たちは目の前のものに気をとられがちなので、本質を先に見極めるために、あえて『逆』という言葉を使いました。
皆さんも、仕事の現場で、家庭で、プライベートで、「逆ダンドリ術」を使って、今年一年、実りの多い時間の使い方に挑戦してみてください。
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勝 眞一郎



