
規模見積もり、工数見積もり、コスト見積もりと並んで 4 大見積もりの 1 つである「期間見積もり」。マスタースケジュールを作成する手順は意外とないものです。期間見積もりの方程式はあるのでしょうか?
また、年末に発表されると噂の PMBOK の最新版は?
T:30代、大手インテグレータのプロマネ、アラフォー
A:30代、コンサル会社のプロマネ
N:30代、自称超大手インテグレータの社員、アラサー
■ PMI 東京フォーラム 2008 と期間見積もりについて
T:「今回は、PMI 東京フォーラム (注 1 ) でも話題になった期間見積もり (注 2) について」
A:「確か、PMリサーチの岡村さん (注 3 ) が、『マスタースケジュールの実現性を検証する』を講演 (注 4) したんだよな」
T:「COCOMO (注 5 ) なんですけど」
A:「COCOMO は使っているよ。概算で期間を見積もらなければいけないときに、他に方法がないしね」
T:「類似プロジェクトから期間を見積もる (注 6 ) というのが一般的じゃないか?」
A:「類似のプロジェクトがない、新規の案件の場合にはお手上げとなる。それにそれは見積もりというより、類推というのでは」
T:「類推見積もり (注 7 ) です」
■ 期間見積もりの方程式
T:「岡村さんが講演で提示した式は『所要期間= 2.5 x (総工数) 0.35』でした」
A:「資料にはそう書かれているが、日本では『2.25 x (総工数) 0.35』らしい。サービス残業とか標準作業時間などを勘案 (注 8 ) すると、そんなものらしい」
T:「さすが、社畜 (注 9 ) が多い日本の企業だ」
A:「うちでは、この式でだいだい概算スケジュールを見積もっているかな」
N:「弊社では受託型が多いし、客からサービス開始時期を指定されていることが多いんです。スケジュール見積もりよりも、山をどう崩していくか (注 10 ) がポイントになってくるんですよね」
T:「入札だと、マスタースケジュールや納品日、サービス開始日が明記されている (注 11) ことが多いからな」
N:「書かれていないと、それはそれで大問題です」
A:「いやいや、それだと通常一年はかかるような開発も、山を積めば (注 12 ) 半年、いや三ヶ月で完了ということになりかねない。やばいぞ」
N:「そうなんです」
T:「入札仕様書とか RFP を書くひとが、妥当性のあるスケジュールを提示できるかが問題だな」
A:「COCOMO 以外ではどんな公式があるかというと、『開発工期= 2.4 x 総工数の立方根』という式が、JUAS (注 13 ) から提供されている。これも COCOMO 流の計算式だな」
■ 工数の按分と試験の名称
T:「工程と工数の割合も、よく議論されるとこだが」
A:「設計:製造:試験=1:1:1とか、4:3:3とか、3:4:3とかありますね」
T:「試験工数が多いのはあまり聞かないかな」
A:「試験をどこからやるのかで、工数の按分割合が異なってきそうだ。単体試験は製造に入れるのか、試験に入れるのか。たぶん製造だと思うんだが。しかし、結合試験は?」
T:「試験の名称とどんな試験をやるのかが、会社によってバラバラ (注 14 ) なのが辛いな。結合の後に、システム試験があって、その後、総合試験?」
A:「そう」
T:「場合によっては、システム結合試験というのもあるし。さて、結合試験は、製造か試験かというと、試験かな?」
A:「ある会社では、製造に入っているらしい」
T:「そうか。各社が目安としている工程の工数按分ってのも、他の会社には適用できないってことだ」
A:「設計も同じだね。詳細設計、プログラム設計と分けた場合に、製造にどこまでいれるのか? 設計から製造まで一輝に開発する場合、どうするのか、などいろいろな課題がある」
T:「全体工数から工数按分を見たり、設計に掛かった工数から後工程の工数を予測するのは難しくなる時代になってきた」
■ PMBOK2008 は?
T:「PMBOK はオリンピックの年に改訂 (注 15 ) なのだが、PMI 東京フォーラムで何か聞いた?」
A:「特に聞いていない」
T:「2008 年はパーソナル PM (注 16 ) とかいう言葉が出ていたが、そこらへんについても対応されるのかな?」
A:「あれは、個人の目標達成のためにプロジェクトマネジメントを適用するという PM の応用分野の話だから、フレームの変更ではない感じがする」
T:「となると、ITIL がバージョン 3 に変わった (注 17 ) みたいに、経営目標達成のためのプロジェクトマネジメントという観点が追加されるか?」
A:「さぁ。ただ、PMI 東京支部会長の神庭さんが ITIL についても言及していた (注 18 ) な」
T:「とうとう ITIL と PMBOK が結合される時代が来たのか」
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キーワード集
(注 1 ) PMI 東京フォーラム・・・2008 年 11 月 23~24 日に学術総合センターで開催された「PMI 東京フォーラム 2008」のこと。
(注 2 ) 期間見積もり・・・正確には「アクティビティ所要期間見積もり」と「マスタースケジュール作成」である。
(注 3 ) PMリサーチの岡村さん・・・1971 年に日本 IBM に入社。銀行の 1 次オンラインから 3 次オンラインの開発を担当。その後 SI 部門に移動。カード業界のジャックス社 JANET プロジェクト、航空業界の JAL/JAS 統合を担当。2004 年に PM 研修の会社である PM リサーチ有限会社を設立。代表取締役。
(注 4 ) 『マスタースケジュールの実現性を検証する』を講演・・・2008 年 11 月 23 日の午後講演。
(注 5 ) COCOMO・・・ソフトウェアの開発費用を見積もる手法の 1 つ。1981 年にカリフォルニア大学のバリー・ベーム(Barry Boehm)によって提唱された。
(注 6 ) 類似プロジェクトから期間を見積もる・・・同じようなプロジェクトの実績を勘案して、期間を見積もること。定量的な実績データがあればよいが、自身が経験したものから持ってきた場合には、単なる KKD である。
(注 7 ) 類推見積もり・・・類推見積もりは、PMBOK 第三版では「コスト見積もり」と「アクティビティ所要期間見積もり」のツールと技法である。
(注 8 ) サービス残業とか標準作業時間などを勘案・・・方程式のなかで、米国: 2.5 日本:2.25という最後の積が違うだけなので、日本は米国の 1.1 倍は生産性が良い、もしくはサービス残業しているということになる。
(注 9 ) 社畜・・・会社に飼いならされてしまい、一般的な倫理観や自己意思を失ったもの。自分でエサを探せず、会社から与えられたものしか食せないもの。自らを犠牲にして、会社に尽くすもの。広義の意味では、社畜=サラリーマン。
(注 10 ) 山をどう崩していくか・・・山積み表(工数山積み表)の突出した部分を他に振り分けで、平準化すること。
(注 11 ) 入札だと、マスタースケジュールや納品日、サービス開始日が明記されている・・・入札仕様書などに、作業範囲、納品物、サービス開始予定日などが明記されていることが多い。逆に、明記されていない場合には、何の作業をいつまでにやらなければいけないかが明確でないため、見積もりが不可能である。
(注 12 ) 山を積めば・・・正確には、その時点の人を増やせば、の意味。簡単にいうと、60人月で半年の作業を毎月 10 人月で作業計画を立てた場合、毎月 20 人の作業計画で 3 ヶ月で実施する計画にすること。数値的には、どちらも 60 人月の作業であるが、実際には作業順序が決められている場合が多いので、期間を 1/2 にすることは、人を増やしても不可能な場合が多い。
(注 13 ) JUAS・・・日本情報システム・ユーザー協会(Japan User Association of Infomation Sysytems)。この記事で提示されている方程式は、93 社の 341 プロジェクトについてアンケート調査「ソフトウェア・メトリックス調査 2008」による。
(注 14 ) 会社によってバラバラ・・・参考に、企業別の試験の名称と略称をいくつか挙げる。
1.単体テスト PT (Program Test)、結合テスト IT (Integration Test)、システムテスト ST (System Test)
2.単体テスト UT (Unit Test)、結合テスト LT (Link Test)、システムテスト ST (System Test)
3.単体テスト UT (Unit Test)、結合テスト SI (SystemIntegration)、総合試験 PT (Product Test)
(注 15 ) オリンピックの年に改訂・・・PMBOK2000(PMBOK Guide 2000 Edition)は 2000 年シドニーオリンピックの年に発行、PMBOK 第 3 版(PMBOK Guide 3rd Edition)は 2004 年のアテネオリンピックの年末に発行された。
(注 16 ) パーソナル PM・・・個人の目標達成にモダン PM のノウハウを適用すること。
(注 17 ) ITIL がバージョン 3 に変わった・・・ITIL の V2 では「サービスサポート」「サービスデリバリ」が主要なプロセスであり、IT サービスの運用管理について定義していたが、V3 では「サービス戦略」「サービス設計」「サービス移行」「サービス運用」「継続的サービス改善」に拡張している。特に「サービス戦略」というカテゴリを設けることによって、ビジネスに対する IT サービスの価値・戦略を連携している。
(注 18 ) ITIL についても言及していた・・・2008 年 11 月 23 日の午前講演。「進化するプロジェクトマネジメント」のなかで「まったくの新規開発はもはや殆どない。運用・保守こそ、今やシステムの最上流である。ライフサイクルコストを無視した開発はありえず、開発局面はライフサイクルのほんの一部分でしかない」と語っている。
・PMI 日本支部
http://www.pmi-tokyo.org/
・日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)
http://www.juas.or.jp/
・itSMF Japan
http://www.itsmf-japan.org/
・PMI 東京フォーラム 2008 公式サイト
http://www.pmi-tokyoforum.org/pmi/forum-2008/index.html
![PM INFO WEB [ プロジェクトマネジメント関連情報 ]](/common/images/logo.gif)


蒼井円, PMP /PMP十三楽坊, PMP(s)



